「家賃を払い続けるなんてもったいない」
そう言って家を買った人に対して「損得も知らずに勢いで買うなんてバカじゃないの」と感じたことはありませんか。
あるいは逆に、自分がその「家賃はもったいない」という理由だけで家を買おうとしていて、本当にそれでいいのか不安になっている方もいるかもしれません。
この記事では、「家賃はもったいない」という理屈が本当に正しいのか、専門家の意見と実際のマイホーム購入者アンケートの両方から検証します。
なぜ「家賃はもったいない」論争は炎上しやすいのか
「賃貸か持ち家か」は、経済メディアやSNSで長年繰り返されてきた鉄板の論争テーマです。
- 持ち家派は「家賃は掛け捨てで、払っても何も残らない」
と主張し、
- 賃貸派は「持ち家は資産どころか負債になるリスクがある」
と反論します。
経済メディアの記事でも「家賃はもったいない」という主張に対して、損得だけで優劣をつけること自体が無意味だという指摘が繰り返しなされています。
つまり、この論争には「絶対的な正解」がそもそも存在しません。
だからこそ、「バカ」「頭が悪い」という強い言葉で語られるほど、感情的な対立が起きやすいテーマなのです。
「家賃はもったいない」は本当に正しいのか
「家賃はもったいない」が正しいと言えるケース
住宅ローンの返済は、家賃と違って自分の資産形成につながります。
特に以下のような条件がそろっている場合、「家賃はもったいない」という主張には一定の合理性があります。
こんな場合はもったいない?
- 長期間、同じ地域に住み続ける見込みがある
- 収入が安定しており、無理のない返済計画が立てられる
- 住宅ローン控除など税制優遇を活用できる
こうした条件がそろえば、家賃を払い続けるより住宅ローンを組んだ方が、総支払額の面でも資産形成の面でも有利になりやすいのは事実です。
「家賃はもったいない」だけで判断すると危ういケース
一方で、専門家からは「家賃はもったいない」という意見への反論も多く出ています。
- 売却時に価値が目減りする:新築で購入した住宅は、1日住んだだけでも中古物件扱いになり、売却価格は大きく下がる
- 住み替えの自由度が下がる:持ち家は身軽に住み替えができず、転勤や家族構成の変化に対応しにくくなる
- 「見えない家賃」がかかり続ける:固定資産税、修繕費、管理費など、住宅ローン以外の支出は完済後も発生し続ける
- 金利上昇のリスクを負う:変動金利で組んだ場合、将来の返済額が増えるリスクを自分で背負うことになる
つまり、「家賃はもったいないから買う」という理由だけで判断してしまうと、こうした見えにくいコストやリスクを見落としたまま契約してしまう危険性があります。
実際に「家賃を支払うのはもったいない」この理由でマイホームを取得した割合はどのくらい?
「家賃を支払うのはもったいない」という理由でマイホーム購入に踏み切った人はどのくらいの割合なのでしょうか。
また、当事者はその決断をどう振り返っているのでしょうか。
実際に、20代という若い年齢でマイホームを取得に踏み切った人にアンケートを実施しました。
【アンケート概要】
調査方法:クラウドソーシングサービスを通じたアンケート調査
調査対象:20代でマイホーム(注文住宅・建売・マンション等)を購入した方
有効回答数:100件の回答のうち、精査の結果90件を有効回答として採用
実施時期:2026年9月
本アンケートでは、なりすまし回答や適当な回答を除外するため、次の2つのチェックを設けました。
①生年・購入年・購入時年齢の整合性チェック
「生年」「マイホームを購入した年」「購入したときの年齢」を別々の設問でたずね、3つの数値に矛盾がないかを確認しました。これにより、実際には20代で購入していない、あるいは回答内容に矛盾がある回答を除外し、100件の回答から90件を有効回答としています。
②実在しない制度名を混ぜた選択肢チェック
「購入のきっかけ」の選択肢の中に、実際には存在しない架空の制度名(「住宅ローン即時完済控除制度」)をあえて1つ紛れ込ませました。内容をよく読まずに適当に回答している場合、このような架空の選択肢にも違和感なく反応する傾向があるためです。有効回答90件のうち7件(7.8%)がこの架空の選択肢を選択しており、該当する回答は「購入のきっかけ」の集計からは除外して分析しています。
紹介する口コミは「若いうちにマイホームを建てて良かった点・後悔した点があれば教えてください」といいう質問への回答です。
アンケート結果サマリー
購入した住宅の種類:「注文住宅(土地から購入)」が37.8%で最多、次いで「新築建売戸建て」28.9%
購入のきっかけ:「結婚・出産・子育てなど家族の予定」が47.0%で圧倒的1位
住宅ローンの利用率:95.6%が住宅ローンを利用
有効回答:100件中90件(整合性チェックにより精査)
紹介する口コミは「若いうちにマイホームを建てて良かった点・後悔した点があれば教えてください」といいう質問への回答です。
「家賃がもったいない」を主な理由に選んだ人は、実は少数派だった
今回のアンケートで、「毎月の家賃を払い続けることに納得感がなかったから」を購入のきっかけとして選んだ人は、90人中16人(17.8%)にとどまりました。
つまり、20代の若いうちにマイホームを購入した人の中でも、「家賃はもったいないから」だけを理由に決断した人は、実は少数派です。
多くの人は、結婚・出産・子育てなど、より複合的な理由で購入を決めていました。
「家賃はもったいない」という判断が、結果的には良い決断につながったという声も多く見られました。
18歳から一人暮らしを続けていたが、25歳で結婚した時にこれ以上家賃に収入が消えていくのが嫌だった。どうせ払うなら家賃よりローンの方が納得できると思って中古の戸建てを購入。その後子どもが4人できて、猫3匹とのびのび暮らせているので良い選択だったと今でも思っている。(26歳・中古戸建て)
物価がまだ高くないときだったので、購入してよかった。また、家賃を払って住み続けるのは非常に損だと感じていたので、その家賃が住宅ローンにかわり、最終的には自分のものになるので、早く家を購入してよかった。(27歳・注文住宅)
毎月の家賃支払いが資産として残り将来の完済年齢も早まる点に満足しています。一方で今後のキャリアや生活スタイルの変化に伴っての家族構成や職場が変わった際の住み替えの難しさや固定資産税、メンテナンス費用の負担をもう少し考慮すべきだったと感じています。(26歳・新築建売戸建て)
早めに購入したことで、家賃代はかからないので、今後家賃高騰などで増えたりしないのが安心だなというのと、住み慣れたところにずっといれるのはいいなと思います。(26歳・中古戸建て)
結婚を機に将来の生活を考え始め、家賃を払い続けるより早めに購入した方がよいと思い決断しました。住宅ローンの返済はありますが、子どもが生まれても生活環境を変えずに済む点は良かったです。(27歳・新築建売戸建て)
「家賃はもったいない」という理由だけで急いで決断した結果、他の検討がおろそかになったという後悔の声も見られました。
毎月、家賃を払い続けることがもったいなく感じ、購入を決断しました。家賃を払ってる分、ローン残高が減っていくのは良かった点ですが、早くに決めすぎて将来設計が立たぬまま間取りを決めてしまったので、後悔をしています。(29歳・注文住宅)
毎月支払っていた家賃がもったいないと感じ、早めに資産形成を始めたいと思い購入を決意しました。若いうちから長期の住宅ローンを組むことで、定年退職時には完済できる見込みが立ち、将来への安心感が大きく増しました。一方で後悔している点としては、購入時の諸費用や将来の修繕費についてのシミュレーションがやや甘く、最初のうちは家計のやりくりに苦労したことです。勢いだけでなく、もっと細かい維持費まで把握しておくべきでした。(25歳・新築建売戸建て)
当時は会社の規定で家賃補助が20代までとなっているので、家賃がもったいないと感じ購入にいたりました。そのときは子供が産まれていなかったので、子供のイメージをしっかり立てられておらず間取り面での後悔があります。(29歳・注文住宅)
毎月の家賃を払い続けるよりも資産になるマイホームを購入したいと思い、20代後半で決断しました。良かった点は、若いうちから自分たちの理想とする住環境で子育てをスタートできたことです。一方で後悔している点としては、資金計画や諸費用についてもっと細かく比較・検討しておけばよかったと感じています。(29歳・注文住宅)
こうした声から見えてくるのは、「家賃はもったいない」という理由そのものが間違っているわけではなく、その理由だけで他の検討事項(間取り、資金計画、金利タイプなど)を省略してしまうことがリスクになる、ということです。
高齢者はアパートを借りられないって本当?賃貸拒否の現状
「歳を取ってからは賃貸で気楽に暮らせばいい」と考える方もいるかもしれませんが、実はそれほど単純な話ではありません。
約2社に1社が高齢者の入居を断った経験あり
アットホーム株式会社が実施した「高齢者の賃貸居住に関する調査」(2026年2月、全国の賃貸住宅管理会社632社・60歳以上の賃貸入居者288人を対象に実施)によると、直近1年間で「高齢を理由に入居を断ったケースがあった」と回答した管理会社は49.2%にのぼりました。
地域別に見ると、関東地方では57.3%、それ以外の地域では40.8%と、関東地方の方がやや断るケースが多い傾向にあります。
誰の意向で断ったかについては、「オーナーの意向」と「オーナー・管理会社両方の意向」を合わせて8割以上を占めており、管理会社単独の判断というより、大家側の意向が強く反映されていることが分かります。
単身高齢者の受け入れで最大の懸念は「孤独死」
同調査では、管理会社が単身高齢者の入居において最も課題と感じていることとして「孤独死」が84.0%と突出して高い結果になりました。
次いで、亡くなった後の「事故物件化」や「残置物処理」への懸念が続きます。
一方、実際に60歳以上の入居者本人に聞いたところ、「入居を断られた経験がある」と回答した人は10.7%でした。
数字だけ見ると多くはありませんが、実際に断られた人からは、保証人の確保が難しいことや、高齢であることを理由に断られたケースが確認されています。
「歳を取ってから賃貸」のリスクを踏まえた住まい選びを
こうした現状を踏まえると、「高齢になったら賃貸に住み替えればいい」という選択肢は、想定よりもハードルが高い可能性があります。
持ち家であれば、こうした年齢を理由にした入居拒否のリスクとは無縁である点は、見落とされがちな大きなメリットだと言えます。
出典:アットホーム株式会社「高齢者の賃貸居住に関する調査」(2026年2月実施、マイナビニュース 2026年6月19日付記事より)
家族がいる場合「もしも」の備えはどう変わるか
マイホーム購入を検討する際、あまり語られませんが見落とせないのが「もしも自分に万が一のことがあったら」という視点です。
団信があれば、ローンがなくなり家族に家を残せる
住宅ローンを組む際、多くの金融機関で加入が求められるのが「団体信用生命保険(団信)」です。
契約者が死亡または所定の高度障害状態になった場合、その時点でローンの残債はゼロになり、家族はローンのない家にそのまま住み続けられます。
団信の保険料は住宅ローンの金利に組み込まれる形が一般的で、生命保険のように年齢や性別で個別に保険料が決まる仕組みとは異なります。
賃貸でもこのリスクは備えられるが、"自動"ではない
一方で、「賃貸だとこのリスクに備えられない」というのは正確ではありません。
賃貸の場合も、将来の家賃負担分をカバーする生命保険(残りの期間に応じて保障額が減っていく「逓減定期保険」など)に加入すれば、同様の安心を得ることは可能です。
ただし、団信は住宅ローンを組む際にほぼ自動的に加入する仕組みであるのに対し、賃貸でこの備えをするには、自分から生命保険に加入するという能動的な行動が必要です。
実際には「そこまで考えていなかった」「保険は最低限しか入っていない」という方も少なくありません。
大切なのは「持ち家か賃貸か」ではなく「備えがあるかどうか」
つまり、「団信があるから持ち家の方が安心」と単純に結論づけるのではなく、正確には「持ち家は備えが自動的に組み込まれやすい、賃貸は自分で意識して備える必要がある」という違いでしょう。
賃貸を選ぶ場合は、万が一の際に家族の住まいと生活費をどう確保するか、生命保険の見直しも含めて意識しておくことが大切です。
結論:損得ではなく「自分の暮らし方に合っているか」で判断する
「家賃はもったいないから家を買う人はバカだ」という主張も、「家賃を払い続けるのはもったいないから買うべきだ」という主張も、どちらも一部分だけを切り取った意見です。
専門家の間でも「賃貸か持ち家か」に絶対的な正解はないとされており、重要なのは損得勘定そのものよりも、以下の点を自分の状況に照らして考えることです。
- 今後どれくらいの期間、同じ場所に住む予定か
- 収入が変化した場合でも無理なく返済を続けられるか
- 家賃以外にかかる住宅ローン特有のコスト(税金・修繕費・金利上昇リスク)を織り込めているか
「家賃はもったいない」という感覚を出発点にするのは自然なことです。
大切なのは、そこで思考を止めずに、具体的な資金計画にまで落とし込めているかどうかです。
そしてもう一つ忘れてはならないのが、先ほど紹介した「高齢になってからの賃貸のハードル」です。
「今は賃貸で十分」「歳を取ったら住み替えればいい」という前提自体が、将来的には成立しにくくなる可能性があります。
目先の損得だけでなく、こうした長期的なリスクも視野に入れたうえで、賃貸か持ち家かを判断することが大切です。
まずは自分の場合の資金計画を確認してみませんか
「家賃はもったいない」という感覚だけで突っ走らないためには、まず自分たちの収入・希望に合わせた具体的なプランを知ることが第一歩です。
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